「みんなで、つなぐ!プロジェクト」に込めた想い(サステナビリティ担当役員・田中 克弥)

いよいよ、「みんなで、つなぐ!」サステナビリティプロジェクトがスタートします。野村不動産グループが2050年のありたい姿として掲げたサステナビリティポリシー「Earth Pride 地球を、つなぐ」の実現に向けて、サステナビリティの取り組みをより早く、より強く、そしてより楽しく(ワクワク感をもって)推進していくため、グループ全役職員に向け、さまざまな情報発信や各部の取り組みの紹介、また参加型のプログラムなどもお届けしていく予定です。

サステナビリティがなぜ必要とされているのか?シンプルですが答えが難しい問いかけだと思います。この問いかけに対して役職員一人ひとりに応えていただくことが、このプロジェクトの主な目的です。そのために必要な情報を様々な手法、手段を用いて提供していきたいと思います。形式的な用語解説の場にならないよう、サステナビリティを身近なこととして、せっかくなら楽しく共感いただけるようなプログラムにしたいと思います。

一言にサステナビリティといっても、「頭では何かやらなきゃと思っていても、何をしたらいいか分からない」、「サステナビリティと事業活動(仕事)をつなげるのが難しい」、そのように思っている方が多いのではないでしょうか。このサイトを通して、そのようなモヤモヤが少しずつでも解消していけるようサステナビリティ推進部一同努めてまいりますので、よろしくお願いします。

今回は、そんな「みんなで、つなぐ!プロジェクト」に込めた想いに関して、サステナビリティ担当役員・田中克弥へのインタビューをお届けします。

お話を聞いた方
野村不動産ホールディングス 田中 克弥

1993年4月(平成5年)新卒入社。新卒配属は大阪支店住宅販売課。
2004年本社住宅営業部。2005年6月人事部人材開発課へ異動となり新卒、キャリア入社の採用、研修を担当。2009年6月再び住宅営業部へ。2012年4月から旧大阪支店住宅営業部長。2017年4月本社住宅営業二部長を経て2018年より執行役員。
これまで経営企画部、名古屋支店長(住宅事業本部)を担当し、2023年よりサステナビリティ推進担当となる。

サステナビリティ推進のカギは「続けられる」チームづくり?

ーサステナビリティ推進における田中さんの役割について教えてください。

田中:私が野村不動産グループのサステナビリティ推進担当に着任したのは、2023年4月。サステナビリティポリシーが策定され、重点課題として5つのマテリアリティとKPIが定められた後を引き継ぎましたが、グループ各部門、個社ごとにサステナビリティの取り組みを具体的な行動として体現していくことが私のミッションだと思っています。

私はサステナビリティの行動は私たち企業グループが社会から求められ続けるために必要な取り組みだと考えています。
本プロジェクトを推進するにあたり、現在の状態を把握するため今年1月にグループ社員の約3分の1にあたる約3,000名を対象に(無作為抽出)アンケートを実施しました。「当社グループのサステナビリティポリシーを知っている」49.6%、 「ポリシーを誰かに伝えられる」はわずか8%、逆に「ポリシーを知らない」が42.4%に至ります。また事業にサステナビリティを取り込む際の導入ハードルとして「コスト的な問題」26.4% 「取り込み方がわからない」55.1% 「知識がない」29.9% 「人事評価などに反映されない」15.0%という結果でした。

サステナビリティポリシーは当社グループ2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life&TimeDeveroperへ」とともに企業理念の元に併記されていますが、まだまだ知られていないというのが現実です。

サステナビリティポリシーはグループ役職員、取引先、株主、などステークホルダーとなる約460名が参加し「当社グループはどのような価値を提供したいのか?」というテーマで議論を重ね、当社グループが2050年にありたい姿を言語化したものです。そのようなポリシー策定の背景も含めて理解いただくこと、その先でサステナビリティを自分ごととして取り組める状態をつくることも役割の一つです。

また、「サステナビリティは必要だと思う反面、コスト負担が厳しい」といったご意見もよく伺いますが、「サステナビリティ≠コスト(収益性低下させる要因?)」「サステナビリティ=私たちが提供するサービスや商品の品質の一部」と考えてみませんか。品質を向上するためには労力もコストを惜しまないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?考えの起点が変わると行動も変わると思います。このプロジェクトがそのような場になることを期待しています。

ー以前からサステナビリティに関わっていたのですか?

田中:今現在は、グループ全体のサステナビリティ活動を推進していくことが役割ですが、これまでサステナビリティに関わる機会はほとんどありませんでした。私は入社以来住宅の営業に長く携わってきました。

ー営業とサステナビリティ推進。一見縁遠いようにも感じますが、今に役立っていることはありますか?

住宅営業はお客様が一生の中で一番高額な買い物をされる決断の場に立ち会う機会が多く大変重い責任を担う業務だと思っています。お客様が興味をもたれた理由、実家や勤務先、家族構成、年齢などの背景的要因、住宅取得を検討している動機、物件選択に際して重要視しているポイントなどから、お客様が今購入されるメリット、担当物件を選択するメリット、担当物件以上の条件を満たした物件が他にないことなど、お客様ごとに条件設定することの重要さを学んだように思います。「顧客起点(マーケットイン発想)」、「品質へのこだわり」、そして諸先輩方から引き継がれている「個に寄り添う姿勢」、といった当社グループの強みの源泉を体験から学ばせていただけた職場だったと思います。

サステナビリティはコスト負担ではなく、私たちにとってサービスや商品の品質の一部である、と捉えた時に少し頭の中の霧が晴れたように感じました。サービスや商品の品質(Quality)の一部ならそこにかけるコストも努力も必要不可欠であり、そのプロセスはこだわらなければなりませんし、結果としてリターンを得なければなりません。営業時代には担当物件の差別化で優位性を考える機会が多かったのですが、サステナビリティを担当している今も同じようなことを考えている時間が多いように思います。

ーサステナビリティの取組に生かされるポイントはありますか?

営業現場ではチームワークの重要性も学ばせていただきました。上意下達が徹底したチームは短期的な成果が得られる、危機には強いチームとなりますが、長くは続かない。長期にわたりモチベーションが高く維持されるにはメンバーそれぞれが役割を負担し、成果(時に未達)があり、反省と改善を行うPDCAが機能的に回っている状態が必要です。サステナビリティの取り組みは短期ではなく長期間に渡ります。当初は経営トップから方向を示されるのでしょうが、2050年に向けてはグループ社員一人ひとりが役割や目的を達成するためPDCAサイクルの好循環に乗れることが大事なことだと思います。

ーサステナビリティはチームで取り組む?

このプロジェクトに「みんなで、つなぐ」と名付けたように、一人ぼっちではなく、みんなでという精神が必要だと思います。サステナビリティに強いチームが必要かというとそうではないと思っています。長期的な取り組みが必要ですので粘性、耐性のあるチームがより適しているのではとないかと個人的には思っています。成果や評価はすぐには形に現れないかもしれませんが、信じて進め続けることが必要です。一人ひとりの社員が“大事な役割を担っている感覚”や“お互いをリスペクトできる関係性”でモチベーションを維持して取り組むことが大事だと思います。

“人間らしさ”を大切にし、よりよい未来を「共に創る」

社員や顧客、株主などさまざまなステークホルダーの声を聞きながら策定されたサステナビリティ・ポリシー「Earth Pride 地球を、つなぐ」には「人間らしさ」「自然との共生」「共に創る未来」という三つのテーマが掲げられています。

ーこのテーマに込められた想いや、田中さんのお考えを聞かせてください。

田中:「人間らしさ」というテーマはとても大事だと考えています。当社グループに置き換えると、企業グループとして成長し、収益目標が達成できる企業集団になれたとして、社員一人一人の尊厳(存在意義)が保たれ、個々人が幸せな状態にあることが両立できていないとしたら仕事の目標・目的は半分しか達成できていないと言えるでしょう。。サステナブルな社会を作っていくうえでは、大前提として私たち一人ひとりの尊厳や心が尊重されることが大事だと思っています。

―人間らしさを大事にしながらサステナに取り組んでいくために、何を大事にしたらよいでしょうか?

サステナビリティの取り組みは企業が社会から求められ続けるために必要な要素であり、人間が生きていくために呼吸をするのと同じような行動なのかもしれません。強制でも義務でもなく心豊か(ハートウォーミング)に活動していることが大事だと私は思っています。

ー共に未来を創っていくために大切にしたいことは何でしょうか?

当たり前ですが地球や環境は私たちだけのものではありません。サステナビリティを実現していくためには私たちが単独で実行するよりも「共に創っていく」ため共創パートナーと歩んでいくことも大切なテーマだと感じています。サステナビリティ推進部ができたのは2020年で、まだ4年しか経っていません。先進的な企業の取り組みなどを見ると当社はまだまだその取り組みにおいては遅れている状態です。他者から学び、他者の力を借りて、サステナブルな社会実現にむけた貢献を果たしていきたいですね。

社会から求められ続けるためのアクション

田中:当社グループは建築物における環境対策においては先頭集団の中で業界を先導している側にいると思います。サステナビリティの取組全般で業界を先導する側であり続けたいですし、業界各社へ貢献できる活動を行うことなどがモチベーションにつながればとも考えます。

ーわかりやすい結果や目的があれば、サステナビリティにも取り組みやすいです。

そうですよね。私は、「企業が社会から求められ続けること」がサステナビリティに取り組む動機というか、ベネフィットになると思うんです。

企業が事業活動を継続するためにはステークホルダーとしての他者の存在は欠かせません。顧客、投資家、金融機関、取引先、そして従業員とその家族、などといった他者の存在があり、他者から必要とされることで事業活動そのものが成り立っています。他者から求められ続けることは企業の存続には欠かせません。

加えて企業としてだけでなく、私たちが一人の「企業人」「社会人」として求められ続けるという意味でも大切なことだと思うのです。「お客様に喜ばれる仕事がしたい」とよく言いますが、お客様だけではなく、「人として社会にとってよいことをしていこう」という気持ちは、巡り巡って自分の存在意義を確認することにもつながるんじゃないかな、と思います。

ー明日からはじめる、サステナのヒントはありますか?

各人ができることから取り組んでいけばいいと思います。ペットボトルを回収する、廃棄物を減らす、冷暖房の設定負荷を軽減する……これらの行動は一見ベクトルがバラバラなように見えて、実はどれも「サステナブルな取り組み」という点で共通しています。大きなことでも、小さなことでも、これからの未来を考えて起こしているアクションそのものが素晴らしいことなんじゃないかなと思っています。

今より悪化した環境を次世代に渡すって、イマイチだと思います。そのために何かすごいことをしようと意気込むより、まずはピッチに立つということの方が大事なのではないかとと思います。

気づいたところから、できることから、みんなで、少しずつ。こうした小さな行動や気づきを日常生活や業務の中で積み重ねていくことが、その先にある未来を変えていくことになるのだと思っています。

ーみんなで、つなぐプロジェクトはこれからどのように進められていくのでしょうか?

田中:具体的なサステナビリティのアクションを事業活動を通じて直接、間接的に取り組んでいただくための材料や教材を「みんなで、つなぐサイト」を活用して提供していきたいと思っています。当初はサステナビリティをより身近に感じていただくため、皆さんから「へぇ~」や「なるほど」をたくさんいただける(と思う)動画コンテンツを提供していきます。通勤時間などを活用し気楽にご視聴いただきたいと思います。

「みんなで、つなぐサイト」は一部一般の方々もご覧いただくことも可能にしており、将来的には各部や各課、個人の取り組みなどを外部の方へ披露する場として活用したいと考えています。まず今年1年はみんなで、サステナビリティへの関心を高めるところから始めていきましょう。