目指すは、循環型社会のゲームチェンジャー。鹿児島で広がる、地域貢献する資源循環

ECOMMIT・城山ホテル鹿児島のサムネイル

幕末、明治維新。その時代に命を捨て、新たな日本を築こうとしたラストサムライがいました──西郷隆盛。およそ150年前、“西郷さん”はすでに持続可能な生活をしていたといいます。そんな彼が過ごした鹿児島では、今どのような挑戦が巻き起こっているのでしょうか。

今回、みんつな編集部が訪れたのは、地域密着型ホテル「城山ホテル鹿児島」と、資源循環のインフラづくりに挑む循環商社ECOMMITの拠点「ECOBASE」。西郷隆盛の精神が息づく地で活躍する二者の活動に迫りながら、未来の「地域循環」へのヒントを共に探ってみましょう。

地域のシンボルを目指して。アイスキャンディー屋がつくった森の中のホテル

広大な錦江湾と迫力ある桜島。鹿児島の絶景が一望できる城山ホテル鹿児島は、1963年に誕生。以来、観光客から著名人、皇室までさまざまな宿泊客が訪れてきました。元は、戦後復興の暗い時代、人々を元気づけようとアイスキャンディー屋から始まったホテルです。

城山ホテル鹿児島

「非日常」や「ラグジュアリー」といったホテルならではの要素を大切にしながらも、地域・環境・人権に関する多様な取り組みを続けてきた城山ホテルは、日本ホテル協会主催の「社会的貢献に対する会長表彰」で4年連続優秀賞を受賞。エコマークアワードでも優秀賞を受賞するなど、サステナビリティに関する取り組みを先駆けて行ってきました。

今回は、同社が行う地域を巻き込んだ「循環」を生み出す活動、それを続ける原動力について、SDGs推進部 グループリーダーの中島由紀子さんにお話を伺いました。

城山ホテル鹿児島の中島由紀子さんが話す様子
SDGs推進部のグループリーダー(取材当時)として人材開発などにかかわってきた中島さん

中島さん:「お客様は、家とは異なる体験を求めてホテルを訪れます。快適な空調、明るく煌びやかな照明、豪華な料理……。ですが、そうした非日常な空間をつくるには『無駄』が多くなってしまいます。当社がSDGs推進宣言を掲げたのは2019年。以降、企業活動を通じて持続可能な地域社会に貢献できるように努めてきました。

ホテルで出る無駄のなかでも、特に深刻なのがフードロスです。昔から焼酎文化が強い鹿児島では『食べずに飲む』と言うほどで、宴会の席で料理が残ることもしばしば。そこで、宴会開始後30分と終了前10分は席に着きゆっくり食事を楽しもうという呼びかけを行う「3010運動」や、食べ残しを専用のボックスで持ち帰ることができる「mottECO(モッテコ)」の導入を始めました。

食べ残しを持ち帰ることができる「mottECO(モッテコ)」の専用ボックス
「もっとエコ」「持って帰ろう」という意味が込められたmottECOアクション

また、消費期限が近付いたホテル内のベーカリーショップのパンを地域の子ども食堂へ寄付したり、調理かすや食べ残しを堆肥化して鹿児島県内の農園で使ってもらったり、クラフトビールをつくる際に出る麦芽かすを牛の餌として活用したりと、できる限りモノを循環させてフードロスを減らしています」

レストラン裏に設置された食べ残しや調理カスを堆肥化する高温乾燥発酵処理機械
ホテルのレストランの厨房のすぐそばに設置された、食べ残しや調理カスを堆肥化する高温乾燥発酵処理機械

地域も自然も大切に。創業者の想いを受け継ぎ、100年先までつづく企業へ。

そのほか、コロナ禍で導入されたアクリル板の活用法を地域の高校生たちと一緒に考えたり、ホテル内の森に設置した巣箱を通して小中学校と一緒にみつばちの勉強をしながら養蜂活動を行ったりと、地域の企業や学校と連携し、教育分野にも貢献しながら再資源化に取り組む城山ホテル鹿児島。地域とつながりながら、次々と新たな挑戦を始めるのは、なぜなのでしょうか。

中島さん:「創業70周年を迎えたタイミングで、『100年先まで企業活動を継続していくためにはどうすればよいか』を社員みんなで考えたことが大きかったです。特に、コロナ禍で勉強会を兼ねて始まった『城山SDGsアワード』を通してSDGsの考えが社員にも浸透し、スタッフの意見が採用されることも増えました。今は、社内のポータルサイトで世の中のサステナビリティの事例を発信し、全社で共有する取り組みも行っています。

城山ホテル鹿児島から見える桜島の景色

また、創業者の想いが今も受け継がれていることが大きいかもしれません。ホテルが建てられている場所は、600種類以上の亜熱帯植物植物が自生し、国の史跡と天然記念物に指定されている遊歩道のそば。自然との調和を大切に、その豊かな自然を守っていこうという約束とともに城山ホテルは創業したんです。だからこそ、どれだけ時代が変わろうと、次の世代にまで豊かな城山の森を守っていく──その精神は今も根付き、ホテルの姿勢につながっていると感じています」

始まりは農機具から。捨てない社会のための「循環の文化」づくり

次に訪れたのは、鹿児島県の薩摩川内市、川内港近くの、かつて鉄工所だった大きな倉庫です。この場所を拠点に資源循環に取り組むのは、循環商社「ECOMMIT」。モノの回収・選別・再流通を一貫して行い、循環の仕組みづくりを行ってきた同社は、2020年に新たな循環の拠点「ECOBASE」として倉庫を生まれ変わらせました。

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ECOBASE

倉庫だったころの姿そのままの、広くごつごつした印象のECOBASE。中に入ると、かつて誰かの家で使われていたであろう茶碗や湯呑、花瓶といった陶器類から古着、農機具まで多種多様な品々が並んでいます。今回は、ECOMMITでブランド戦略や広報にかかわり、現在はコーポレート部門を担う山下彰太さんにECOBASEの中を案内してもらいながら、同社の「捨てない社会」実現への想いを伺いました。

ECOMMITでブコーポレート部門を担当する山下さん
ECOMMITでブランド戦略や広報にかかわり、現在はコーポレート部門を担当する山下さん

現在は、野村不動産グループが運営・管理する商業施設・ホテル・マンションにも設置しているポスト型の回収ボックス「PASSTO」やLINEでのサービスなどを通した、衣類の回収をメインに行っているECOMMIT。そのなかで、唯一店舗としての機能を果たしているのが、ここECOBASEだ。山下さんは、この場所が「原点回帰になる拠点」だと語ります。

山下さん:「創業以来、商品の生産工場として使っていた場所を、地域に開かれた循環の拠点にしようとつくったのがECOBASEです。クリーンセンターや自治体主導の地域イベントで回収されたもの、リユースショップで廃棄されそうになっていたものなどがここには集められています。それらを活用し、この倉庫もリノベーションしました。

創業当初は農機具を中心に扱っており、農家さんの高齢化が進むなか、使わなくなった農機具を直接買い付けてメンテナンスし、ここから国内外へ販売していたんです。なので、今でも多くの農機具を置いており、近所で農作業をする方が見に来ることもあるんです」

ECOBASEで販売される農機具
基本はECサイトでの出品で売れることが多いそうですが、農機具に関しては、地域の方々がホームセンターに行く前に来てくれることもあるといいます

「新品よりも価値がある」リユース品に隠されたストーリーを紡いでいく

「最後まで価値をあきらめない」ことを大切に、厳密に選別して販売。できるだけ廃棄をしないために、ECOMMITは、価値があるものを可能な限り回収し、循環させていく──そんな強い想いで「捨てない」社会実現に向けて取り組む同社が、より多くの「循環の担い手」を生み出すため、意識していることがあります。

山下さん:「以前、ここにピアノが回収されてきたことがありました。ピアノの後ろには、いくつかの町や学校の名前がチョークで書いてあり、そのピアノが色々な学校を経由してここに来たことがわかりました。そうした“物語”が見えるのがとても素敵だと感じ、そのまま見えるように置いてみたところ、すぐに『買いたい!』という人が現れたんです。

そういう“ストーリー”こそが、リユース品の魅力でもあると私たちはそのとき感じました。だからこそ、厳選したものだけでも丁寧にポップに書くなどを通して、お店を訪れた人に『モノの背景』が伝わることを心がけています」

ECOBASE店内に貼られたポップに、スタッフのモノへの想いが綴られている
店内に貼られていたポップ。ECOBASEスタッフのモノへの想いが綴られている

「捨てない」文化をつくっていく。ECOMMITの活動のモチベーション

一つ一つを丁寧に、だけど迅速にモノを手で仕分けていく。ECOBASEには、モノと向き合う従業員の方の姿がありました。今日一日でどれくらいの量を見極められるか──日々の作業は「正直大変だし、環境と経済を両立させることは簡単ではない」と山下さんは言います。そうした状況でも、ECOMMITで働き続けるのはなぜでしょうか。

ECOBASEで働くスタッフの様子

山下さん:「私も含め、メンバーみんなが『捨てない社会をかなえる』というビジョンに大きな可能性を感じていて、やりきった先に自分たちがゲームチェンジを起こせる会社になりえると信じているのではないでしょうか。今は大変でも『捨てない』が当たり前になったとき、自分たちが世の中の先をいく会社になっている。だから、大変だけど頑張れる──そんな気持ちかもしれません。

ただそうした循環が当たり前の世界は、競争し合っていては実現できない。だからこそ、パートナーを増やしていき、同じような志を持つ企業にどんどん参画してもらいたいと思っています。会社としてはまだ成長過程ですが、企業や自治体、個人などさまざまな方々と関係性を築き、循環の輪を大きくしていく。それによって生み出せる経済圏があると信じています」

想いが紡がれて、広がっていく。地域と資源が循環する社会

鹿児島で巻き起こる地域循環の取り組み。その一つ一つは小さくても、必ず大きな円となり、いつか「捨てない」が当たり前になる未来が想像できました。そうした活動の根底にあるのは、地域とのつながり。地球環境を想う気持ちと同様に、地域のこと、地域の人を大切にしていく──そんな前提があってこそ、生まれる循環なのかもしれません。

ぜひ、皆さんも鹿児島という場所で、かつて西郷さんが願った持続可能な生き方の実践を知り、そこに流れる空気を感じてみてください。

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