新井グループCEOと語る、1万人を超えるの仲間と共に目指す、「幸せと豊かさ」 への挑戦

新井CEO、前野教授、大畑氏の3名が並んで微笑む集合カット
新井 聡さん

大学卒業後の1988年に野村證券株式会社に入社、2022年の同社退任時は営業部門担当副社長。同年に野村不動産ホールディングスに入社、2023年より野村不動産ホールディングス株式会社 代表取締役社長・グループCEO 兼 サステナビリティ委員長。愛知県出身。学生時代は剣道部に在籍。最近はほぼ毎晩のお酒と月に3~4回のゴルフを楽しむ。

前野 隆司さん

武蔵野大学ウェルビーイング学部長、慶應義塾大学名誉教授。キヤノン株式会社でエンジニアとして勤務後、大学教員に転身。ロボットやAIの研究を経て、幸福学(ウェルビーイング)研究の第一人者となる。『幸せのメカニズム』など著書多数。

大畑 慎治さん(進行役)

サステナ博士。ソーシャルグッドを社会に実装することを目指し、新たな事業や市場を生み出す。早稲田大学ビジネススクールではソーシャルイノベーションのクラスを担当。O ltd. CEO、Makaira Art&Design 代表、THE SOCIAL GOOD ACADEMIA(ザ・ソーシャルグッドアカデミア) 代表、MAD SDGs プロデューサー。

前編では、野村不動産グループが掲げる「幸せと豊かさの最大化」というビジョンが、「社員の心の中にある思いを表現したかった」という新井グループCEOの強い意志から生まれたことを紐解きました。

後編では、このビジョンをどう組織として日々の業務に組み込んでいくのか具体的な方法に迫ります。新井グループCEOの経営者としての原点から見えてきたのは、「身近な人を幸せにする」という事業の本質でした。そして、1万人を超える組織でビジョンを実現するための、明日からできることなどお話を伺いました。

新井CEOと前野教授が並んで立ち、笑顔でカメラに向かうツーショット

1万人を超える組織が幸せになるには?

大畑:前野教授が、企業理念に「幸せ」を掲げることが重要だとおっしゃいましたが、実際にそれを経営に実装し、成功している企業の事例はあるのでしょうか。

新井: 先生の本で読んだ、長野県のある食品メーカーさんの話は印象的でしたね。私も実際に訪問したことがあるのですが、ああいう会社はやはり社員の方も幸せそうに働いていましたし、本当にいいなと思いました。

新井グループCEOが両手を広げ、言葉を強調しながら語る様子。横にはスライドが映っている

前野: その食品メーカーさんは「いい会社をつくりましょう」というのが理念なんです。そして「いい会社とは何か」というと、社員もお客さんも幸せな会社だと言います。そういう意味でも、ビジョンに「幸せ」やそれに近い概念が入っている会社は強いですね。

大畑: なるほど。そうした成功事例がある一方で、それを1万人を超える規模の組織全体で実現していくとなると、また別の難しさがあるかと思います。

新井:そこはぜひ前野教授ともお話したい点ですね。グループで約8千数百人、アルバイトの方も入れると約1万2千人が共に働いていただいている中で、それぐらいの規模の組織でみんなが幸せに働くために必要なことを、組織運営の視点で何か示唆いただけるようなことはありますか。

前野:大企業と中小企業を比べると、幸福度の平均値は大企業の方が高いんです。働きすぎやハラスメントなど、ネガティブな要因を撲滅する仕組みが整っているからです。だから大企業は、まあ不幸せではない。ただものすごく幸せなのは中小企業に多いんですね。 なぜかというと、社長の声が届きやすいからです。

例えば「幸せと豊かさを最大化する」というビジョンが、本当に全社員に広がれば、幸せな会社になる。そのためには、部署のトップが社長のように「幸せと豊かさの最大化だ」とみんなが言えば、それを束ねていける。原理的には、100人の組織を100個作れば1万人でいけるはずですよね。

新井CEOが両手を広げ、言葉を強調しながら語る様子。横にはスライドが映っている

「最大化」が意味するものは、一部のスーパーマンより、みんなの5%

大畑:「最大化」という言葉について、もう少し全員で議論したいと思います。最大化させる場合、ある程度もれなく、みんなが幸せになることを考えるのがいいのか?それとも、すごく幸せという人を作っていくやり方もあるんだと思うのですが、このあたりバランスはどう考えるんでしょうか。

前野:幸せの観点から見ると、やはり平等にした方が平均値は高くなるんです。格差があって不幸せな人がたくさん出てしまうとよくない。だから「最大化」という時に、一部の人のすごい幸せな状態の合計の最大ではなく、みんなが最大になるんだよ、という原理を含むことが重要だと思います

新井:そうですね、優秀といわれる方でも、やはり自分一人がいくら頑張っても200%、300%のパフォーマンスって上げられないと思います。でも、数千人のうちの多くの人が幸せを感じながら働いて、それぞれの方がパフォーマンスを5%、10%という感じで上げていくことは可能なはずですし、それが組織全体に拡がっていけば、とてつもなく大きな付加価値が生まれるはずなんです。 私たちのグループもそんなふうになっていけばいいなと思います。

前野教授はが椅子に座り、隣で大畑氏が資料を手に語っている

「幸せ」は可視化できるのか?

新井:前野先生の著書にも書いてありましたが、幸せを感じていると付加価値が生まれたり、生産性が上がると言われますよね。ただ、付加価値とか生産性は測れるのかもしれないんですけど、幸せ自体はどうやって測るのでしょうか。

前野:私がやっている方法は心理学ですね。アンケートで「とても幸せ、かなり幸せ、やや幸せ…」といった選択肢に直感的に丸をしてもらうんです。「直感的にかなり幸せと答えたくなった人は、かなり幸せだろう」というのが、心理学の、ある意味で乱暴な仮説なんです。もちろん誤差はあるでしょうけど、1万人規模のデータを取るとその傾向が見えてきます。個人の幸せをアンケートで測るのは精度は悪いけれども、部署100人分の平均値を調べて部署ごとに比較をするとそれは意味があります。そして、企業はエンゲージメントといって、企業と社員個人の結びつきや、相互が満たされているかどうか?を調査するようになりました。とてもいい取り組みであると同時に、幸せというものに本質的に取り組んでいくのであれば、会社との関係も含めた、トータルでの個人の幸せ・ウェルビーイングを追いかけてみると、より本質的な議論になるかもしれませんね。

新井CEOが椅子に座り、手を合わせながら語っている。手前には大畑さんが映っている

明日からできること―日々の「雑談」で気づく実現へのヒント

大畑: 組織論や可視化の話を伺いましたが、私たち一人ひとりがもっと身近なレベルでできることは何でしょうか。

新井:近年、雑談が減っていると思っています。仕事中も、目の前の人とメールでやりとりしていたり。本当は少し雑談することで、人と人とで何か共鳴して生まれるものってあると思うのです。でも、みんな結構パソコンにワーッと向かっていて話さないんですよね。急に一対一の面談となれば身構えてしまうので、普段からコミュニケーションできるのが理想です。こちらをご覧になっている方も多いと思うんですけど、“雑談”をちょっと意識していただけるとありがたいなと思っています。

それから、今思いましたけど、多分「何が幸せなんだっけ?」とか、「どうやったら幸せになるんだっけ?」とか、恥ずかしくて雑談もできないようなことが、今日のような機会に、もしくは各部署で真面目な顔でやった後にお酒飲みながらでも、できたらすごく面白いと思います。

日本企業だからこそ、世界に先駆けて挑戦できる

大畑: 先程も話にありました、大企業が幸せになる、という挑戦は、日本企業にとってどのような意味を持つのでしょうか。

場前方を見つめながら講演に耳を傾ける参加者たち

前野:実は、遺伝子のレベルで言うと、日本人はチャレンジが苦手な「心配性遺伝子」を持つ人の割合が8割と、欧米人に比べて非常に高いんです。農耕民族として、守りを重視してきた歴史が関係しているのかもしれません。

でも、日本人は本来、きめ細かく物事を進めるのが得意です。海外の会社が苦手とするような、複雑な問題解決を粘り強く行うことができる。だからこそ、複雑な問題解決をして大企業が幸せになるというのは、私は日本が最初にやるんじゃないかと思っているんです。

新井:ぜひ、そうありたいですね。私も今日よりも明日幸せになりたいなとか、来年はもっと良くしたいなとか、自分自身の幸せを高めていきたいと思って行動していきます。そういう人がグループ内の仲間がいるということを皆さんにご認識いただいてですね、一緒により多くの幸せを目指していきたいと思います。

大畑: 新井さん、前野さん、本日は誠にありがとうございました。「幸せと豊かさの最大化」という大きなビジョンが、実は「雑談」という私たち一人ひとりが明日からできる具体的なアクションに繋がっていることを実感でき、非常に示唆に富んだお話を伺うことができました。

野村不動産グループの幸せな未来づくりをテーマにしたグラレコ

「幸せと豊かさの最大化」というビジョンは、壮大なテーマに感じられるかもしれませんが、普段の仕事に新たな視点を加えるだけで、そのヒントは意外と身近なところに隠されているのかもしれません。

今回のイベントは、会場約60名、オンラインでは約250名が参加し、大きな反響を呼びました。イベント後のアンケートには、参加者の熱意ある声が数多く寄せられています。

「とても興味深いお話を聞けました。自分が担当している業務の延長線上にいる人が幸せなのかなと考えると、業務改善にも繋がるし、新しいサービスも生まれそうな気がしました」

「AIによる最適化が進む現代だからこそ、数字に還元できない一人ひとりの物語と向き合う姿勢が、我々には問われているのではないでしょうか」


部署や事業部、会社全体で幸せや業務姿勢に対する考え方が異なるからこそ、雑談含めてコミュニケーションが必要だと感じました。明日から雑談します!」

まずは、この記事をきっかけに、隣の席の同僚と少しだけ「雑談」してみる。あるいは、チームで「自分たちの幸せ」について話し合ってみる。そんな小さな一歩から、あなただけの、そしてグループ全体の「幸せと豊かさの最大化」が始まるのかもしれません。

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