奥多摩「つなぐ森」でのサステナ新人研修に密着!

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野村不動産グループが掲げる「Earth Pride 地球を、つなぐ」というサステナビリティ・ポリシーのもと、2050年のありたい姿に向けた取り組みの一環として現在進行しているのが、「森を、つなぐ」東京プロジェクトです。このプロジェクトに込めた想いや野村不動産グループのサステナビリティを五感で触れ、これからの業務の中で取り入れることを目指し、トライアルとして2024年4月に野村不動産株式会社に入社した新人社員へフィールドワーク研修を行いました。

新入社員たちは何を考え、どう感じたのでしょうか?実際のフィールドワークの様子とともにお届けしていきます。

野村不動産グループの「森をつなぐ」東京プロジェクトとは?

2021年、野村不動産グループは豊かな森林を有する奥多摩町と包括連携協定を締結。事業活動を通じたサステナビリティの推進を目指し、地域の雇用と産業の創出や自然環境保全・気候変動対策に向けて奥多摩町との連携を開始しました。翌年、同町が保有する森林約130ヘクタールの地上権(※)設定を受け、「森を、つなぐ」東京プロジェクトがスタートしました。

このプロジェクトでは、東京の自然と都市を舞台に、多様な人間活動と自然環境を総合的に考慮して課題解決につなげていく「ランドスケープアプローチ」という手法を採用。「つなぐ森」が有する豊かな生態系の維持とさらなる発展に取り組み、それらを野村不動産グループの事業活動に組み入れることで、自然と共生する社会を創り上げていくことを目指します。

(※)地上権とは、その土地の使用や譲渡を任意で行える権利(物権)のこと。

ランドスケープアプローチのイメージ画像
ランドスケープアプローチ(野村不動産グループ サステナビリティページより)

「つなぐ森」でサステナ新人研修を実施するワケとは?

2024年4月、野村不動産株式会社の新入社員を対象に「つなぐ森」とその周辺地域のフィールドワーク研修をトライアルとして実施しました。実施にあたり、「森を、つなぐ」東京プロジェクトを担当し、今回の研修プログラムを開発した野村不動産ホールディングス・サステナビリティ推進部の榊間綾乃さんに、フィールドワークの狙いについてお話を聞きました。

榊間さん:新入社員へのサステナビリティ研修は、座学とフィールドワークという2つの形で行っています。頭で理解することを重視した座学と比べて、フィールドワークでは、グループが掲げる「ダイバーシティ&インクルージョン」「人権」「脱炭素」「サーキュラーデザイン」「生物多様性」というサステナビリティの5つの重点課題(マテリアリティ)を体感できるようなプログラムを意識しています。

そして、「森を、つなぐ」東京プロジェクトに関わる地域の方々とも交流をしながら、プロジェクトの意義や事業とのつながりについて理解を深めてもらうこともコンセプトとしています。例えば「つなぐ森」を歩いてそこにある生態系に触れるというネイチャーガイドのプログラムがありますが、そこではただ「自然は大切だね」と感じてもらうだけでなく、どうすれば社員として、これから配属される職場でサステナビリティの考え方を活かしていけるのかを考えるきっかけを提供できるよう、自然教育研究センターの方と相談しながら行程を工夫しました。

自然が持つ恵みのことを生態系サービスと言いますが、「つなぐ森」には木材や水、レクリエーションの場としての価値など、多様な生態系サービスがあります。これらの活用を通して、「つなぐ森」を訪れた人の意識や行動などを変えていくことができると、ネイチャーポジティブ(生物多様性の回復)へ一歩近づけるのではないかなと期待しています。

ちなみに、座学研修は当社グループの新入社員向けにこれまでも実施してきていますが、フィールドワーク研修は初めての試みなので、どのような反応が出るかドキドキしながら当日を迎えました。

本来はフィールドワーク研修もグループの新入社員皆さんに受けてもらえたらと思っているのですが、オーバーツーリズムにならないような体制の整備がまだ途上であることと、奥多摩での終日の研修ができるかどうか当社グループ内でも会社ごとに分かれてしまうことがあり、今回はトライアルの意味で野村不動産の新入社員を対象にしました。新入社員の研修を担当する人材開発部からは、入社してまもない時期に新入社員同士の親睦を深めてほしいという希望もあり、人材開発部の役員、部長、研修担当と一緒に研修を実施しました。来年以降、ぜひより多くの新入社員に研修の機会を提供したいと思っています。

1日密着!サステナ新人研修レポ

ここからは、サステナ新人研修のフィールドワーク当日の様子をお届けしていきます!

JR青梅駅に集合して、バスで移動の画像
JR青梅駅に集合して、バスで移動

障がいを持つ方々とともに行う、しいたけ栽培の作業

最初に向かったのは、知的障がいを持つ方々が入居する支援施設「東京多摩学園」。数十名の入居者の方が暮らしており、日々の活動として、しいたけ栽培などを行っているそうです。

園長の山下さんは「ここには言葉が話せる方も、そうでない人もいる。ぜひ今日は一緒に作業をして、触れ合ってほしい」と話します。今回は、彼らが行っているしいたけ栽培の、原木の浸水に向けた作業のお手伝いをしました。

園長の山下さん(左)と歓迎してくださった入居者の方(右)の画像
園長の山下さん(左)と歓迎してくださった入居者の方(右)
しいたけ菌を培養した「種駒」を打ち込んだ原木を、次の「浸水」を行う作業場所へ運搬の画像
しいたけ菌を培養した「種駒」を打ち込んだ原木を、次の「浸水」を行う作業場所へ運搬

ダイバーシティやインクルージョン、人権などについて知る機会はあっても、障がいを持つ方と社内で一緒に働くという環境はなかなかないのが実情。しかし、ここでは「先輩」である入居者の方々に私たちが教えてもらい、声を掛け合って作業をする様子が印象的でした。作業を1回行うだけでも大変な中、入居者の方々は慣れた手つきで進めていらっしゃるのを見て、「それぞれのできること、得意不得意を見つけ、ともに創っていくこと」の意義を身をもって体感することができました。

「つなぐ森」での植林体験

ダイバーシティ交流会の次は、「つなぐ森」で行われている植林作業を実際に体験。植林作業は森林管理のパートナーである東京都森林組合の協力のもと行いました。

植林作業が行われている場所は、山の中のかなり急な斜面。榊間さんは「そこに一緒に入って作業することで、木を植え育てる人の想いなども学んでもらえたら」と言います。

急峻な山を登り、植林の現場への画像
急峻な山を登り、植林の現場へ

植え付ける部分の土を掘り、苗木を入れ、土を整える。一見簡単そうな作業ですが、デリケートな苗木がしっかり育つよう、枯木や石を取り除いたり、踏み固めて周りに乾燥を防ぐ枯れ葉などを覆い被せたりと、丁寧に作業を行っていきます。

苗木を植える様子の画像

10分ほどかけて、一人1本ずつ苗木を植えました。周りの大きな木々を見渡して「植えた木があれくらいの高さになる頃には、私たちはもう定年?もっと?」、「20年後、木を見に来たいな、私も負けずに成長したいな」といった声が聞こえてきました。長い時間をかけて、この木々が「つなぐ森」の一翼を担っていくんですね。数十年に渡って循環する森や木を通して、普段の業務の中ではなかなか想いが及ばない未来を考えるきっかけになる時間でもありました。

ネイチャーガイド

続いて、「つなぐ森」で奥多摩の食材を使ったお弁当をいただいた後、自然教育研究センターの協力のもとネイチャーガイドを実施しました。

ニジマスなど奥多摩で獲れた食材を使用した「奥多摩弁当」の画像
ニジマスなど奥多摩で獲れた食材を使用した「奥多摩弁当」

ネイチャーガイドの目的について、榊間さんは次のように話します。

榊間さん:森に生息している生物などを観察して、自然を身近に感じてもらうところから入ってもらいます。そこから、グローバルな生物多様性の課題というところを少しずつつなげていき、最終的には『このような課題があるから、野村不動産グループではこうしたプロジェクトを行っている。どうすれば配属される職場でサステナビリティの考え方を活かしていけるのか』と業務の話に落とし込んでいけるようなガイドプログラムをつくりました。ただ森に行くだけではなく、ネイチャーガイドからの話や体験を通して、参加者の行動変容を促したいと思っています。

ここからは、ネイチャーガイドの伊藤さんに、「つなぐ森」を案内していただきます。はじめに、この森にいる危険な動物たちや気をつけるべきポイントを教えていただき、山道へと入っていきます。

今回案内してくれたネイチャーガイドの伊藤さんの画像
今回案内してくれたネイチャーガイドの伊藤さん
いざ出発!の画像
いざ出発!

沢で立ち止まると、伊藤さんから「ここの石を裏返してみて」という指示が。新入社員の一人が恐る恐る石を裏返すと、そこには指先よりも小さなカゲロウなどの生き物が隠れていました。足元にも色んな生き物がいるんですね。

新入社員の一人が石を裏返す様子の画像

森の中を歩きながら、「ここにはキツツキの穴があるね」「この高い木々の間をムササビが飛ぶんだよ」と、そこに動物たちが過ごしている痕跡を一つひとつ紹介していただきました。

じっと耳を澄ますと鳥の声が聞こえてきたり、木々や草がカサカサと揺れるのが見えたり。先ほど植えたような木が立ち並んでいるだけでなく、それを利用して生活している生き物や、植物の生命を支える生き物も存在します。もちろん、誰かが誰かを捕食し、捕食されるという関係性もあります。そんな生態系ピラミッドについても教えていただきながら、この森の豊かさについて学んでいきます。

説明する伊藤さんの画像

ガイドツアーの最後には、この森の役割や、野村不動産グループが森づくりをしていることの意義について皆で考えながら、それぞれが見たものを通じて「これからこんなアクションをしていきたい」という宣言を数字とともにしました。

「『つなぐ森』の動物のことを、1日に1回は思い出す」

「自分の植えた木を、死ぬまでに2回見にきたい」

「『つなぐ森』で学んだ大変さを忘れないように、観葉植物を1本育てたい」

そんな、この森への愛着を感じるような宣言が次々と聞こえてきました。オフィスでデスクワークをしていると、サステナビリティの手触り感が得づらいのですが、体感することで、日常のアクションが生み出される瞬間を目の当たりにしました。

参加した新入社員の画像

「つなぐ森」の木材で、薪割りを体験。その薪はどこへ?

最後に向かったのは、丸太置き場と、東京・森と市庭(いちば)が運営する製材加工所(東京都森林組合所有)です。東京・森と市庭は、ツリーハウスや木製のおもちゃなどを製造・販売する「林業の6次産業化」にも取り組んでいます。木はどうやって加工され、どこへいくのか?を見に行きました。

切り出された丸太は、品質ごとに並べられているの画像
切り出された丸太は、品質ごとに並べられている

製材加工所では、大きな機械を使って丸太の皮を剥ぎ、角材へと形を整え、乾燥します。製材された木は、ゼネコンや家具メーカーへ渡り、エンドユーザーの元に届けられると言います。すでに芝浦にあるトライアルオフィス(※1)や新宿野村ビルARUMON(※2)でも、フローリング材として活用されており、今後事業の現場や物件の共用部で利用できるオリジナル家具を開発中です。

(※1)「BLUE FRONT SHIBAURA(ブルーフロント芝浦)」開発区域内の「浜松町ビルディング」(「BLUE FRONT SHIBAURA N棟」に建替予定)に、本社移転に向けて新しい働き方をトライするトライアルオフィスを設置。現在、グループ社員が実際に働き、オフィス空間の検証、新たな働き方への挑戦、課題の洗い出し、改善を繰り返している。

(※2)「ARUMON」は、グループ社員専用の、新宿野村ビル内のラウンジ。

「つなぐ森」の木材がフローリング材として使用されているトライアルオフィスの画像
「つなぐ森」の木材がフローリング材として使用されているトライアルオフィス
「つなぐ森」の木材を使ったオリジナル家具(CGパース)の画像
「つなぐ森」の木材を使ったオリジナル家具(CGパース)
「つなぐ森」の木材を使った「ARUMON」のフローリングの画像
「つなぐ森」の木材を使った「ARUMON」のフローリング
東京・森と市庭・牛島さんの画像
東京・森と市庭・牛島さん

木材の加工プロセスについて知り、木が植えられてから実際に使われるまでの一連のサプライチェーンについて理解した新入社員たち。今回のフィールドワーク最後の体験として、野村不動産グループが運営する「NOHGA HOTEL」内のレストランのピザ窯で使う薪を自分たちで作ろう!ということで、薪割り体験を行いました。

薪割り体験をする画像
薪割り体験をした新入社員の画像

彼らが割った薪は、無事に秋葉原のNOHGA HOTEL内にある「PIZZERIA & BAR NOHGA」に到着し、美味しいピザを焼くための燃料として使われました。

「PIZZERIA & BAR NOHGA」のピザ窯で使われた薪と、その窯で焼いたピザの画像
「PIZZERIA & BAR NOHGA」のピザ窯で使われた薪と、その窯で焼いたピザ

参加した新入社員は何を感じ、考えた?

朝から丸一日、奥多摩で野村不動産グループのサステナビリティについて考えた新入社員の皆さん。最後に、参加した社員2人から感想を聞きました。

資金部兼ホールディングス資金部・熊谷響さん(左)、住宅営業二部・松井淳さん(右)の画像
資金部兼ホールディングス資金部・熊谷響さん(左)、住宅営業二部・松井淳さん(右)

熊谷さん:サステナビリティの取り組みや「森を、つなぐ」プロジェクトのことは知っていましたが、実際どう事業と結びついてるのかまではあまりわかっていませんでした。今日の体験を通じて、こういう風に都心での事業に結びついてるんだな、とか何十年後に自分が植えた木がもしかしたら自分が携わる住宅の事業に反映されるかもしれないと思うとワクワクします。

サステナビリティに取り組む意義や、自分自身との関わりなど、行ってみて初めてわかったこともたくさんありました。この地域や森への愛着も湧きました。サステナビリティと事業とのつながりについて社外の人にも説明できるくらい、理解が深まったと思います。

松井さん:「つなぐ森」といっても最初は想像もつきませんでしたが、色々な方と会って現場を見たことで、「これが実際に芝浦プロジェクトに使われる木なのか」「こういう人が関わっているんだ」という実感が得られて、奥多摩という都心から離れた場所でも事業を通じてつながっていることを感じ、「つなぐ森」の意味を理解しました。

今日出会った方々からのお話を通じて、多くのステークホルダーの方がいることを知り、このプロジェクトのスケールの大きさを感じました。これから、今この「つなぐ森」のプロジェクトで野村不動産のステークホルダーとして支えてくださっている皆さんに喜んでいただけるように、今度は野村不動産として貢献していきたいなと思いました。

<参加した社員へのアンケート結果>

参加した社員へのアンケート結果の画像

参加した新入社員のすべての社員から、この研修を通じて野村不動産グループが取り組むサステナビリティや「森を、つなぐ」東京プロジェクトへの理解が「とても深まった/深まった」という回答がありました。そして研修で感じたことや学んだことが「自分自身の行動を変えていきたい」という強い意志につながったようです。

また、「森を、つなぐ」東京プロジェクトの今後の展開について、自然体験型の宿泊サービスやサステナブルツーリズム、子ども向け自然体験施設などの提供があったら魅力的だ、という声が上がっていました。自社の施設としてだけでなく、地域の人々やお客様など、幅広く多くの方に親しんでいける「つなぐ森」を目指して。新入社員の今後の活躍に期待が高まります!

奥多摩・「つなぐ森」の恵みを生かしたサービスの展開に向けて

今回、新入社員向けのサステナビリティ研修として実施されたフィールドワーク。榊間さんは今後の展望について次のように話します。

「つなぐ森というフィールドを手に入れましたが、高齢の杉に覆われているなど、自然としてもレクリエーションの場としてもまだ課題の残る森です。少しずつ適切に手を入れながら、訪れた人に一つでも気づきを提供できるきっかけ作りができるとよいなと思っています。「つなぐ森」の中や周辺に宿泊や食事ができる場所などを確保できれば、より多くのことを感じて学べるプログラムがつくれるかなと思います。また、オーバーツーリズムに気をつけながらも、社内に限らず多くの人へアプローチできたらさらに面白いかもしれません。グループ横断でこの森の活用機会を模索する試みも始まるので、今までにない視点でこの取り組みを進化させられるのではないかと楽しみにしています。」

今後は、「つなぐ森」や奥多摩町でのサステナブルツーリズムを一般向けに提供することも検討中。豊かな森が持つ生態系サービスをうまく活用しながら、ネイチャーポジティブ(生物多様性の回復)に寄与することを目指しています。