「やらされ感」をなくす熱意。全スタッフとの対話で実現した、ホテル アンテルーム 那覇のグリーンキー認証取得

ものを選ぶ基準の一つとして、地球環境に配慮しているかどうかを大事にする人が増えている昨今。旅や出張などで利用する宿泊施設に関しても、「環境配慮」が、コストと同じくらい重要なポイントになりつつあります。そうしたなか、野村不動産グループのUDSが企画・設計、沖縄UDSが運営するホテル アンテルーム 那覇は、2025年5月、沖縄県内のホテルとして初の「グリーンキー認証」を取得しました。 今回は、ホテル アンテルーム 那覇の宿泊マネージャーの栢野知幸氏に、デンマーク発の環境認証であるグリーンキー認証取得への想いやその裏側を伺いました。「環境に優しいホテル運営って、お金がかかるのでは?」「手間が増えるんじゃない?」そんな疑問を持つ方にこそ、ぜひ読んでいただきたいです。
ゲストの満足度を最優先に。環境負荷削減を目指して挑んだ「グリーンキー認証」
【グリーンキー認証とは?】
デンマーク発の環境認証。旅の予約サイトなどで、環境に配慮している宿を探す際の国際的な指標になっています。世界の60を超える国において、5000以上の施設が取得しており(2024年1月時点)、150項目という多岐にわたる基準を満たすことで取得することができます。

長年、ホテル アンテルーム 那覇は、サステナブルな取り組みを行ってきました。ただ、海外だけでなく、日本においても「環境負荷にどれほど向き合っているか」が宿選びにおける重要な要素となりつつある今、選ばれるホテルになるためには、よりサステナビリティに真剣に向き合う必要がある。そうした想いもあり、グリーンキー認証の取得を目指し始めたといいます。
栢野(かやの)さん:「認証の内容は、環境から人権までホテル運営に関わるあらゆる側面が対象です。なので、最初は150ある項目の内容を一つずつ理解していくところから始めました。専門知識がなかったので、行政や取引先に相談しながら地道に調べながら進めていきました。この過程が一番大変でしたね」
150ある基準のうち、初年度はグリーンキー取得に必須とされる75の基準をクリア。以来、より多くの基準を満たせるように試行錯誤を重ねているといいます。そのなかで、基準を満たすことと同じくらい重要視してきたのが、ゲストの”満足度”。社長からはこんな言葉を投げかけられたと言います。
栢野さん:「あまり多くは言われませんでしたが、唯一言われたのが、『ゲストに不便をかけるようなことがあってはいけない』ということ。環境負荷を下げるために、ゲストの満足度を下げることは本末転倒。社内での議論とシミュレーションを重ね、お客様にご負担をかけないかを徹底的に確認してから新しい取り組みを実行するようにしていました」
プラスチックゼロは「コスト増」にあらず。環境負荷削減とコスト減を両立
「エコな製品は高い」というイメージはまだまだぬぐえません。しかし、ホテル アンテルーム 那覇は、実際に環境負荷削減に向き合ってみて、「コスト削減は不可能でない」と実感したと言います。
栢野さん:「竹素材の歯ブラシやコームなど、エコな商品は、プラスチックに比べてまだ単価は高いです。ただ、アメニティに関しては、年間で発注する数はある程度見込みがあるので、先方と交渉するなどし、単価を抑えて変更することができました。トータルの仕入れコストはそこまで変わらないか、むしろ少し下がっているくらいです」

栢野さん:「また、環境負荷の削減の観点から、最も大きな成果の一つが、客室のペットボトル入りミネラルウォーターの廃止です。以前は、年間で40万本以上のペットボトルを発注していましたが、これを客室用のカラフェ(水差し)と館内2箇所に設置したウォーターサーバーでの給水方式に切り替えました。
その結果、館内のペットボトルの数は約90%減り、ペットボトル製造時やホテルまでの輸送時に排出されていたCO2量も大幅に削減することができました」

さらに、サステナビリティを事業に組み込むうえで障壁になりがちな「コスト」を抑えることで、オペレーション上でも成果があったと栢野さんは続けます。
柏野さん:「大量のペットボトルを保管していた倉庫のスペースが空き、他の用途に活用できるようになったり、客室へ水を補充する清掃スタッフの手間が減ったりしました。それによって、効率よく業務が進められるようになったんです。環境負荷の削減と効率化の両方を実現できたのは、大きな成果でしたね」
35名のスタッフ全員と直接対話。「やらされ感」をなくす熱意
なかなか自分ごととして理解することが難しい「サステナビリティ」。ホテル アンテルーム 那覇では、どのようにしてメンバーやホテル全体にその気運が広まっていったのでしょうか。そこには、メンバー一人ひとりの意図を尊重する柏野さんの姿勢がありました。
柏野さん:「メンバーが約35名いるホテルで、グリーンキー認証取得を目指すことはメンバーにとっても大きな変化でした。私は、上から『やれ』と言われるのが嫌なタイプなので、部下にもそうならないよう徹底していました。なので、新しいアクションを実行する際は、メールではなく、できる限り一人ひとりに直接会って、その意味や意図を伝えることを意識しましたね」
メンバー一人ひとりが、自分にできることを考えていく。そうした風土が少しずつ広がるなかで、ホテル アンテルーム 那覇の取り組みも次のように広がっていきました。
ホテルで課題となりやすいビュッフェスタイルでの提供によるフードロス。でも、ゲストが楽しみにしてくれているビュッフェは続けたい──ホテルのそうした想いから、料理長主導のもと、作り過ぎたカルパッチョを朝食ビュッフェのシーフードカレーとして提供したり、ラウンジで余ったアイスコーヒーをコーヒーゼリーにアレンジしたりと、食材や調理方法の面で工夫を凝らしたメニュー計画が日々行われるようになりました。
さらに、ホテル アンテルーム 那覇の取り組みは、ホテルという枠を超えて、地域にまで広がりを見せています。たとえば、ネパール出身のフロントスタッフが始めた交流会が、ビーチクリーンやシティクリーンへと発展。今では、沖縄のネパールコミュニティや地元団体と連携し、時には100人規模で活動することもあるそうです。

そのほか、地元の就労支援センターでつくられた農作物を使ったドリンクを開発したり、客室に残された未開封の食材をフードバンクに提供したりと、地域社会に貢献しながら、サステナビリティの輪を広げています。
ホテル アンテルーム 那覇が目指す、未来のホテルの姿

取得までのプロセスは大変だし、環境への取り組みは長期的な目線で取り組む必要がある。でも、やってみると決して不可能なことではないと気づいた──栢野さんは、これからのホテル アンテルーム那覇についてこんな言葉で締めくくりました。
柏野さん:「今後は、グリーンキー取得施設として取り組みを発信し、お客様や他の事業者にも環境問題への当事者意識を持ってもらえるような社会づくりにもっと貢献したいです。たとえば、竹歯ブラシ一本を取っても、『これは竹からできていて、こういう流れで環境に貢献している』という背景が、目で見てわかるような企画やイベントなどを行っていきたいと考えています。
ホテル アンテルーム 那覇に滞在することで、サステナビリティを体感できる──そんな場所にできたらいいなと思っています」
まとめ
未来を見据えて取り組み続けるホテル アンテルーム 那覇。スタッフ一人ひとりの「当事者意識」を育みながら、チーム全体で挑戦を続けていました。その結果、「環境活動はコスト増」という従来のイメージを覆し、環境負荷の低減と経営効率向上を同時に実現したのでした。
サステナビリティを「規制」や「義務」として捉えるのではなく、あくまでも顧客目線で「お客様の価値を高める手段」として捉え直す。そうした彼らの前向きな姿勢こそが、これからの事業にとって大切な「未来に向けた価値創造」につながっていると感じられました。
次回は、ホテルの外に飛び出して、沖縄UDSグループが取り組んでいる地域を巻き込んだサステナブルな活動の様子や、沖縄中部のコザで立ち上がったスタートアップの取り組みについてお届けします!