外国人ももっと働きやすい職場づくりのアイデアを、一緒に考える。インクルーシブデザインワークショップ・外国人ワーカー編【後編】

2024年度インクルーシブデザインワークショップ第2回の外国人編。前編では、野村不動産グループで活躍する特定技能・技能実習生の皆さんが日々働いている現場を体感し、日本人参加者とともに意見を交わすことで相互理解が進んでいった様子をお伝えしました。
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後編では、外国人の特定技能・技能実習生の皆さんがBLUE FRONT SHIBAURAでさらに働きやすくするために実践できるアイデアを考えます。
BLUE FRONT SHIBAURAが外国人ワーカーから選ばれるために
現場見学やグループディスカッションですっかり打ち解けた様子の皆さん。次は「BLUE FRONT SHIBAURAでこうやって一緒に働きたい!」をテーマに、各班で議論することになりました。ファシリテーターのPLAYWORKS代表取締役・タキザワケイタさんは「人材不足の中で、野村不動産グループの物件が働く場所として外国人の方々に選ばれるにはどうすればよいか、その視点もあわせて考えてみましょう。また、特定技能・技能実習生の方々だけではなく、自分が清掃業務をするとしたらどうか、という立場でも考えてみてください。」と呼びかけました。

まず、外国人ワーカーの皆さんがもっと働きやすい環境を整えるために、次のような課題やアイデアが出ていました。
・休憩室に外国人ワーカーの皆さんの要望を聞き取る「目安箱」のようなものを置けないか?(野村不動産の日本人社員)
・シフトがバラバラで外国人ワーカー同士の交流も少ないので、同じ国の出身者同士などでコミュニケーションを取れる時間を増やせないか?(野村不動産アメニティサービスの日本人社員)
・外国人ワーカーの方々も含めたグループ横断での親睦イベントなどを行い、雑談できる程度の関係性になれたら嬉しい(野村不動産の日本人社員)


続いて、施設面でも改善アイデアが生まれました。例えば、休憩室に設けられた畳を敷いたスペースは靴を脱いで疲れた足を伸ばせて好評のようですが、地下に設けられたスペースのため薄暗く、外の光を感じられる明るい場所にもくつろいで休憩できる場所を設けるとよいのではないか、という意見がありました。
他にも、外国人の特定技能・技能実習生の働く現場を見た野村不動産や野村不動産パートナーズのメンバー、そして特定技能・技能実習生を支える野村不動産アメニティサービスのメンバーからこのような意見が出ました。
・仮眠室や自習室のような一人で過ごせる空間や、仕事の合間にアクセスしやすい礼拝室を設けるとよいのでは?
・ごみの運搬などでエレベーターを使用するが、多くの人が利用していて待ち時間が非常に長いので、改善できないか?
・早朝や深夜の清掃時には施設の冷暖房がOFFになるが、作業が捗るようにその時間帯もONにできないか?

また、特定技能・技能実習生の方からは、制服や掃除道具など仕事に欠かせないものについても要望が。
・暑い時も寒い時も同じ制服で、サイズもユニセックスのみ。季節や体形に合わせてコーディネートできる自由な制服を用意できないか
・もっと軽くて、使いやすくて、機能がよくて、オシャレな清掃道具が欲しい
予想以上に出た数多くのアイデアを前に、タキザワさんから「ここで出たアイデアを全部やってみるだけで、現場が相当変わるのではないか」と期待感が声に表れました。あとは実践あるのみ、です。
ワークショップの最後は、各グループで振り返りを行いました。芝浦プロジェクト本部の日本人参加者の一人のコメントが、この日の成果を象徴しているようでした。
「同じグループで働いていますが、このワークショップの機会がなければお話しできませんでした。とても楽しかったですし、色々な考えが聞けて気づきを得られました。これからも、どんどん意見があれば教えて下さいね」
最後に、野村不動産ホールディングスグループ ダイバーシティ&インクルージョン推進担当(ワークショップ実施当時)・宇佐美直子さんが参加者の皆さんにこう呼びかけました。
「野村不動産アメニティサービスの遠藤社長にご相談したのが昨年(2024年)の5月、事前に懇親会などを開いて丁寧に準備を行い、本日このワークショップを開催できました。ワークショップで得られた知見を活かし、実際に事業に落とし込めると良いと思います」

手を取り合ってともにチャレンジを
外国人ワーカーをテーマとした今回のインクルーシブデザインワークショップ。今回参加した、企画に携わった皆さんは、どのように受け止めたのでしょうか。

安部駿太郎さん(野村不動産 芝浦プロジェクト本部 事業部)
「ごみの分別体験は体力的にも大変で、忍耐力も必要なので想像以上に疲れました(苦笑)。休憩室に不足していると教えてくれた備品がBLUE FRONT SHIBAURAでは抜け落ちていたことに気が付きました。快適に仕事ができる環境を整えるだけではなく、大多数を占める日本人従業員や入居テナントさんとももっと関われて、働くのが楽しいと思えるビルにしていきたいです。少し失敗するかもしれないチャレンジングなこともありますが、最新の技術の導入なども相談しながらやっていければと思います」

大島康太さん(野村不動産パートナーズ 芝浦事業部、写真左)
「ビルの建物管理を担当していますが、そこで働く特定技能・技能実習生の皆さんとは直接お話ししたことがありませんでした。正直自分だけでは気づけなかった部分も多く、対話の必要性を再認識しました。また、野村不動産グループの数社が集まって、それぞれの視点で課題を発見したり考えを交換できたりしたこともいい経験でした。これからも各個社の垣根を越えて連携していきたいですね」
筧智洋さん(野村不動産パートナーズ 芝浦事業部、写真右)
「大胆な変化を起こすことに目を向けがちですが、すぐに取り組めそうなことがたくさん出てきました。まずは小さくても自身でできることからひとつずつ始めたいです」
今回のような日本人従業員の皆さんとの対話やワークショップは初めての経験だったという外国人の特定技能・技能実習生の皆さんは、どのように感じたのでしょうか。

技能実習生・アンさん(フィリピン出身、写真左)
「良い環境を作ることについて同じ気持ちで話し合えた経験は、将来に役立つと思いました」
技能実習生・タオさん(ベトナム出身、写真中央)
「色々な意見を交わせたこと、みんなでアイデアを考えられたことが楽しかったです」
特定技能・ティカさん(インドネシア出身、写真右)
「一緒に皆さんとお話できて嬉しかったです。不満なことがあってもやるしかないと思っていましたが、これからは色々と相談できそうで前向きな気持ちになりました」
さらに、3人はそろって「今回参加できなかった同僚も多いので、またワークショップをやってほしい!」と声を弾ませてくれました。
彼女たちがインタビューに臨む姿を傍らで見守っていたのは、野村不動産アメニティサービス総務部人材開発課・川端ゆかりさん。「3人の成長ぶりに感動した」と感激の面持ちです。

「ワークショップ開催準備が始まった頃は、私自身も“インクルーシブデザインって何だろう”という状態でしたが、今日はみんなで理解を深めることができ達成感がありますし、D&Iへの関心がより一層強まりました。
私たちの大切な仲間である特定技能・技能実習生の皆さんの働きぶりを知ってもらうことを通して、野村不動産グループ全体で多様な人材活躍を目指していきたいです。
人手不足はかなり深刻ですので、特定技能の方には今後指導者としての役割を期待しています。BLUE FRONT SHIBAURAでも、楽しく長く活躍してもらえるように環境整備を進めたいです」
ファシリテーターのタキザワさんは、今回のワークショップの意義をこのように総括してくれました。
「特定技能・技能実習生というのは初めてのテーマで、チャレンジングなワークショップでしたが、期待以上の成果が得られたと思います。これまで接点のなかった者同士が、未来について対等に話し合う場を作ることができました。BLUE FRONT SHIBAURAで、特定技能・技能実習生の皆さんが活き活きと働いている姿を見るのが楽しみですね」

いかがでしたでしょうか。忙しい毎日の中、自分がオフィスで捨てたごみの行方はともすると意識しにくいかもしれません。いつも当たり前に広がっている綺麗なオフィス環境の向こうで、誰が、どのように働いているのか――。無関心や無意識の偏見と向き合い、想像力を膨らませながら同じ場所で働く仲間として互いに尊重し合える文化を作り上げる第一歩にしていきましょう。
インクルーシブデザインワークショップは、多様な価値観や背景を持つ人に企画段階から参画してもらって商品やサービス、制度づくりを行う重要性を理解するとともに、すべての従業員が心地良く働ける環境づくりを行えるように実施しています。単に学び合うだけでなく、一歩踏み込んで皆さんがそれぞれの職場で行動を起こせるように一緒に考えていきませんか。
